オードリー
勿論ピンクのベストを着たお笑い芸人の事ではない。
女優オードリー・ヘップバーンの事だ。
店から帰って眠くなるまで何でもいいと思って手にしたビデオが「ティファニーで朝食を」だった。僕はオードリーが大好きだ。「ローマの休日」は何度見てもいい年をして切なくなる。理容室で髪をばっさり切って、鏡に映った自分の容姿を見る時のしぐさは天使の生まれ変わりとしか言い様が無いし、最後に宮殿に戻るシーン。「絶対に振り返らないで」と鶴の恩返しと同じセリフ残し、走り去る時、公務に戻る決意をして逆の意味で馬車がカボチャに戻る瞬間を覚悟する時の芯の通った役こそ似合う女優だ。
「おしやれ泥棒」「シャレード」のようなラブコメディ・サスペンスも許そう。だがオードリーが似合わない唯一の役柄が遊び人あるいは娼婦役だ。滲み出てくる高貴なものが違和感を与える。そういう意味で「ティファニーで朝食を」は今でも苦手だ。
タクシーでストッキングをはきかえるシーンがある。フロントシートに足を投げ出し、隣にいる男の事など感知せずと言うような装いで着替えるのだがオードリーに似つかわしくない事はなはだしい。ロリンズにモードの曲が似合わないのと同質のような気がした。僕はストッキングを脱ぐシーンにはうるさい。こういうシーンはマリリン・モンローかエリザベス・テイラーに任せた方がいい。
だいたいこの映画、原作と全く違う。まずエンディング。オードリー扮する「ホリー・ゴライトリー」が同じアパートの住人の無名作家と結ばれてしまうと言うご都合主義。その作家には原作には全く出てこない女デザイナーのパトロンが付いていて恋の鞘当ゲーム仕立てになっている。ホリーの名刺には(ホリー・ゴライトリー、旅行中!)とかかれている。いつも自由奔放で思いついたとき思いついた場所に行かなくてはならない女性だ。簡単に結婚などしてもらっては困るし、そういう役をオードリーにやらせてもらっては困る。
この映画の主題歌は「ムーンリバー」は映画を見ない人でも知っているかもしれない。ホリーがギターを爪弾きながら歌うシーンがある。あたりまえの話だが小説にはこんな歌はどこにも出てこない。ただホリーが歌うところは一ヶ所有る。
Don’t wana sleep
Don’t wana die
Just wana go a travelin
Through the pasuture of the sky
旅する放浪者をイメージする歌になっている。
主題歌の方もジョニー・マーサの詞が夢を追い求めるハックルベリー・フィンの冒険を思わせる内容にはなっている。
訳詞 前略
同じ虹の果てを求めている
私のハックルベリー・フィンのような友
ムーンリバーと私は
この映画の一番の功罪は自由への願望のイメージとしての「ティファニーでの朝食」を実際にティファニーの前でパンとコーヒーをオードリーに食べさせてしまう演出だ。それでもこの映画はヒットして、実際あった話だが日本の農協の団体旅行でティファニーで納豆定食でも食べようと大挙して押し寄せたと言う事だ。
この映画が好きになれないもう一つの理由はホリーと同じアパートに住む日本人が欧米人が日本人を茶化す時の典型になっている事だ。メガネの小太りの出つ歯のおっちょこちょいのカメラマン・・・・・
ずいぶん前になるがタイのリゾートホテルでスタッフからショウでコントをやるから出て貰えないかと打診された。どんな役かと聞くとメガネをかけた何でも写真をとる日本人観光客の役であった。丁重にお断りしたのは言うまでも無い。
本日駄洒落
オードリー・ヘップバーンに捧ぐ
「老婆の休日」
「洒落にならんどー」
「おしめ泥棒」
「黒くなるまで待って」日本人jazzmanの悩み
「うるめいわしのさぼりな!」
05 Apr, 2010 | yoshida